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完治さんと歩こう!
アウトドアのプロによるNZウォーキング指南3
トンガリロクロッシング
アウトドアならお任せという完治さんと一緒に誌上ウォーキングに出掛けましょう。通常のウォーキングにはない、地球が生み出した景観が異色のトンガリロクロッシング。きつい登りを克服したからこその360度の雄大な景色は言葉には言い表せません。
(Quarter 2002秋号より)
Text/Photo by Kanji Saito

ナウルホエ山を向かいに、サウスクレーターを見下ろす
北島中央部に大きくすそ野を広げる一大火山地帯、それがトンガリロ国立公園である。ここはニュージーランドで最も古く、また世界でも4番目に制定された国立公園である。もともとは辺り一帯を支配していたンガティ・トゥファリトア部族の所有する聖なる土地であった。しかし、1887年に部族の長であったホロヌク・テ・ヘウヘウ・ツキノ4世が、移植してきた白人移民たちによる土地の買い上げや、また自分の子孫が分配相続することで、聖なる土地が分割されてしまうことを恐れ、英国女王の加護の下に置くべく寄付を申し出た。それがもとで、「テ・ヘウヘウ、並びにその部族を記念して、ニュージーランド全人民の所有する公園」、つまりニュージーランド初の国立公園が誕生したのである。
現在、トンガリロ国立公園は、ユネスコの定める世界遺産に2つの分野(自然遺産と文化関連の遺産)で指定され、世界でも初めての複合遺産となった。火山とその地形が織りなすさまざまな自然、そしてそこに深く根を下ろし豊かな文化を築いたマオリ。この2つの側面の概要を、国立公園入口にあるファカパパ・ビジターセンターで見ることができる。
トンガリロ国立公園内には数多くのトランピングコースがあり、公園の北半分をぐるりと回るノーザンサーキットはグレートウォークの1つに指定されているが、有名なのはその一部であるトンガリロクロッシングだろう。全行程7〜8時間に及ぶどちらかといえば長めのコースだが、ワンデイウォークとしてはニュージーランドで最多利用者数を誇る人気のコースだ。

深い碧をたたえるエメラルドレイクス
トンガリロクロッシングを歩くには、タウポ、あるいはトゥランギをベースにすると便利。どちらの街からも往復バスのサービスがある。トンガリロクロッシングは、トンガリロ国立公園の北4分の1を縦断する形で歩くので、スタート地点とゴール地点がかなり離れてしまう。車を回すことを考えたら、バスを利用したほうがはるかに楽である。
ここを歩く際に注意してほしいのは、変わりやすい天候。どんなに良い天候でも雨具だけは持っていってほしい。トラックの中ほどの区間は森林限界(高緯度地方や高山の森林生育の上限)を超え、岩と砂だけの世界となり、遮るものも逃げ込む場所もないから、十分な備えが必要なのだ。
コースは、マンガテポポ側からとケテタヒ側からの両方から入れるが、マンガテポポ側からの方が一般的だ。
マンガテポポの駐車場に着いたら、このトラックを歩く上で知っておかなくてはならないことなどの注意を与えられるので、よく聞いておこう。
トラックはよく整備されており、とても歩きやすい。トイレは、マンガテポポの駐車場、そこから15分ほどのマンガテポポハット、そして一番きつい登りのデビルズ・ステアケース(悪魔の階段)のふもとに設置されている。ここを過ぎると、コース後半のケテタヒハットまでない。

トゥイ、トムティット、ベルバードなど鳥のほか、グリーンオーキッド、サンヂデュー(食虫植物)など珍しい植物も辺りに多い
トラックは、低木が生い茂る高原の中を、白く雪を頂いたルアペフ山を右に見ながらスタートする。緩やかに広がる谷が次第に狭まるにつれ、むき出しの溶岩があちらこちらに顔を出し始める。ナウルホエ山の度重なる噴火で流れ出した溶岩だ。奇っ怪な形に固まったものもあり、日本なら「鬼押出」とでも名前が付くところだろう。
見上げるような壁が行く手に覆いかぶさったところで、「ソーダ・スプリングス」との分岐点となる。分岐から左に折れると、5分のところにいかにも涼しげな滝がある。
ここからいよいよコース最大の急坂、デビルズ・ステアケースが始まる。もう草木もほとんど見当たらず、高山植物がしがみつくようにして生えているばかりだ。その間を縫うようにして、一気に高度を稼いでいく。
小一時間も登ると、急に視界が開け、サウスクレーターの端へと出る。元気があり余っている人なら、ここでコースを右に外れ、ナウルホエ山登頂もできる。往復2時間ほどみておくとよいだろう。
クロッシングの本コースの方は、ここからしばらくはまっ平となり、急登坂で疲れた体と心をしばし休めることができる。

トンガリロ山と深い結び付きを持つマオリ。オールブラックスのハカ発祥の地も、トンガリロ山のふもと、ロトアイラ湖である
クレーターを渡り、反対側を登り切ると、コースの最高地点レッドクレーターである。カイマナワ山地、ナウルホエ山、ルアペフ山、そして遠くにはタラナキ山を望む雄大な景色が360度に広がる。
足元にほほ笑む小さな湖、エメラルドレイクスまでは、軟らかい火山灰の坂を滑るように降りていく。続くブルーレイクのわきを抜けたら、あとは下りばかりだ。タウポ湖、ロトアイラ湖などを遠くに見ながら、つづら折れを幾つも曲がり続ける。斜面にちょこんと建てられたケテタヒハットを過ぎたところにケテタヒ・ホットスプリングがあり、もうもうと白煙を上げているが、ここは私有地であり、またマオリの聖地でもあるので、絶対に立ち入らないように。
そのまま快調に高度を下げていくと森林限界を過ぎ、トラックはなんの予告もなく鬱蒼とした森に囲まれる。トゥイ、ベルバード、トムティット、ファンテイルなどの姿や声を楽しみながら、ゴールまでのんびりと歩こう。

まるでサケのようなニジマスが、群れをなして川に上ってくる。世界の釣り人の垂涎の的だ
タウポ、トゥランギといえば、釣り。それもマスのフライフィッシングだ。秋から冬にかけて、タウポ湖で大きく育ったマスが、トンガリロ川などの流入河川に産卵のためにさかのぼってくる。これを釣ろうと国内はもとより、世界中から釣り人が集まってくるのだ。釣れるサイズは、55〜65センチのニジマスで、運良くメスだとまるでイクラのように大粒の卵が入っている。刻みショウガを入れたしょうゆ、みりんで2日も漬けておくと、それはそれはおいしいイクラが出来上がる。ちなみに身を刺し身で食べる場合は、ワサビじょうゆよりショウガじょうゆの方が臭みが消えておいしい。
で、肝心のそのマスをどうやって釣るかだが、タウポ、トゥランギのいずれの街の釣り具屋でも道具のレンタルを行っている。しかし、釣りはやはり魚影の濃いポイントでやらないと確率は低いので、プロのガイドを雇い、案内してもらうのが一番だろう。

斎藤 完治 Kanji Saito
1986年、フライフィッシングをするため1年の期限付きで日本を後にするが、“釣り天国”のニュージーランドでそのまま帰らぬ人となる。以降11年間、フィッシング・ガイドとして大勢の観光客を魅惑の世界に引きこみつつも、ある日、人の案内ばかりで自分の釣りができないことに我慢できなくなり、フリーライターに転向。雑誌『アウトドア』『フライロッダース』『フライフィッシャーズ』など多数に寄稿。著書に『巨大鱒に魅入られ、ニュージーランド暮らし』(つり人社)、『極楽ニュージーランドの暮らし方』(山と渓谷社)などがある。