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完治さんと歩こう!
アウトドアのプロによるNZウォーキング指南1
ワイタケレ・レンジ&ウェンダーホルム
アウトドアならお任せという完治さんと一緒に誌上ウォーキングに出掛けましょう。そして週末には、実際にワイタケレ、ウェンダーホルムに足を運んでみてください。ほら、完治さんが言った通り、濃い緑の香り、鳥のさえずり、巨大なカウリがあなたを迎えてくれるはず。
(Quarter 2001冬号より)
Text/Photo by Kanji Saito

アラタキ・ビジターセンターでは立派なマオリのカービングが迎えてくれる
オークランドから西に車で約30分。アーティストが多く住むティティランギの街を抜け、道路が一回り狭くなると、辺りの緑が濃くなるとともに、人家もまばらになってくる。右にカフェを見てもうしばらく行けば、アラタキ・ビジターセンターまではわずかである。シーニック・ドライブから左に入ると、2階建ての立派な建物があり、マオリの木製彫刻が訪問客を入り口で迎えてくれる。
2階にはワイタケレ・レンジの自然について学べるさまざまなものが展示されており、小さな子供でも遊びながら勉強できるよう展示方法に工夫が凝らされている。ここはまたインフォメーションセンターにもなっているので、オークランド郊外の公園やウォーキング・トラックなどのパンフレットなどもすべて取りそろえられている。週末にあちこち出掛けてみたいと思っている人は、一度ここに来て、資料を集めておくと便利だろう。
建物の周りは広いテラスになっており、公園の深い森、貯水池、マヌカウ・ハーバーなどが一望に見渡せ、それだけでもここに来る価値がある。

アラタキ・ビジターセンターの展望台から広がる雄大な景色
ワイタケレ・レンジ内には数多くの散歩道があるが、お勧めはこのセンターから道路を渡ったところにある、アラタキ・ネイチャー・トレイル。短いアッパー・ループとそれより少し長いローワー・ループの2つからなっており、全行程をゆっくりのんびり歩いても、1時間ちょっとの短いトラックである。特にアッパー・ループは道幅も広く、きれいにならされているので、乳母車などでもまったく問題なく回れるようになっている。
コースは、背丈の低い木々の間を抜ける緩やかな下りから始まり、しばらく行ったところで右側に入る小さなループ道との分岐点にぶつかる。わずか5分ほどで戻ってくる小ループだが、この辺りで見られる木が名札つきで紹介されているのでぜひとも回っておきたい。もちろんここだけでなくトラック全体にもあちらこちら、森、木、そこにすむ生き物に関する説明があり、一つ一つ自分の目で確かめながら自然に親しむことができる。
坂をどんどん下りていくに従い、回りの木が覆いかぶさるように高くなり、シルバーファーン、ブラックファーンなどの木性シダがひときわ目に付くニュージーランド特有の森林風景となる。

まっすぐに伸びたカウリ。これでもまだまだ若い木だ
しばらく行くと、ローワー・ループとの分岐点にさしかかる。このトラックは途中までは道幅も狭く、また段差もあるので乳母車などではさすがにきつい。しかし、もし大人だけで来ているのだったら、ぜひともローワー・ループにも足を伸ばしてほしい。
ローワー・ループの見どころは、何と言ってもカウリだろう。すっくとそびえるカウリの根元に、ちょっとしたデッキが造られているので、しばらくここに腰を落ち着けて巨木の雄姿をじっくりと眺めよう。アラタキ・ビジターセンターの壁に、このカウリと、国内現存で最も大きいカウリ、“タネ・マフタ”の直径が記されている。前者は2.45メートルなのに比べ後者は4.38メートル。あらためてタネ・マフタの大きさに感動するとともに、過去にはそれよりも一回りも二回りも大きなカウリがあったことに驚いてしまう。もしそんな巨大なカウリを間近で見たら、ものすごい威圧感があったに違いない。
カウリの林を通り越すと道は再び広くなる。右側に小高い丘に続く小道があるので、ここにも上ってみる。
丘の頂上には数分でたどり着く。そこにも何本ものカウリが林立していて、その中ほどにやはりデッキが設けられている。カウリの木霊に取り囲まれるようにして、静かな森でのひとときを過ごせる。

香り、色、味。ゆっくり舌の上で転がして、違いを楽しむ
広くなった道は出発点の駐車場まで上りとなるが、傾斜が比較的緩いため、周りを取り囲む鬱蒼とした森の中をゆったりと楽しみながら帰れる。
ワイタケレ・レンジの自然に触れたら、オークランドへ帰る前にちょっと寄り道をして、ヘンダーソン、クメウに行くと面白いだろう。この辺りは、数多くのワイナリーがあり、その幾つかを回るだけで、ソムリエ気取りでテイスティングを堪能できる。きりっとしたシャルドネ、味わい深いカベルネ・メルローなど、それぞれのワイナリーごとの特色がよく分かって、なかなかできない体験である。

ひんやりとした森の中は、原始そのままの姿だ
近年、オークランドから北へのモーターウェイが伸びたおかげで、ずいぶんと北に手軽に遊びに行けるようになったが、まだまだ訪れる人の数は少ないため、意外な穴場と言えるかも知れない。
オレワまでモーターウェイを快調に飛ばしたら、ウェンダーホルムはもうすぐである。坂の途中の右側に入り口がある。多少分かりづらいが、大きな看板が出ているので見逃すことはない。
広い芝生と巨木の立ち並ぶ落ち着いた雰囲気の公園で、こことマウンガタウホロ(ウェンダーホルム)の丘を結ぶ1時間あまりのループ・トラックがお勧めのコースだ。
行き止まりの駐車場に車を止め、19世紀に建てられたというコールドリーハウスの脇を抜けて、丘へと足を進める。歩き出してしばらくは、マヌカ、カヌカの低い木立が両側に塀のように立ち、明るい陽を浴びながらゆっくりと高度を稼いでいく。それがニカウ、プリリの生い茂る森へと移る辺りから、雰囲気がガラリと変わる。先ほどまでの明るい芝生の公園が、真昼でも光のあまり射さない原始のままの森へと一変するのだ。道はワイタケレ・レンジほど整備が行き届いていないものの、急なところはすべて手すり付きの階段になっているので、熟年や子供連れでも安心して歩くことができる。

歩き疲れたら、温泉に入ってのんびり
この森の特徴は、何と言っても鳥の多さだろう。白い蝶ネクタイを着け、転がるような声で歌うトゥイ、大きな羽音をたてて飛んで行くケレル、小さくさえずりながら舞うファンテイル、人なつこいロビン、声はするけれど姿は見せない内気なグレイウォブラー。森の中をたくさんの個性豊かな鳥が現れては消え、消えては現れる。
木立が少し薄くなったと思ったら、いきなり海に向かって開けた眺めのいい崖の上に出る。以前はここに見晴らし台があったのだが、現在では取り壊されてしまった。道はそのまま続き、反対側に抜けることもできるが、ここから引き返すほうが帰りは楽。見晴らしのいい崖から数分戻ったところで左に折れる道があるから、帰りはこちらを通れば、また違った風景を楽しむことができる。
ウェンダーホルムに足を伸ばしたついでに寄りたいのはワイウェラのホットプールだ。温泉につかってゆったりとくつろいでもいいし、何種類もあるウォータースライドではしゃぐのもいい。深い森の中を歩いた心地よい疲れが、温泉の湯の中でのびのびと解きほぐされていくだろう。

斎藤 完治 Kanji Saito
1986年、フライフィッシングをするため1年の期限付きで日本を後にするが、“釣り天国”のニュージーランドでそのまま帰らぬ人となる。以降11年間、フィッシング・ガイドとして大勢の観光客を魅惑の世界に引きこみつつも、ある日、人の案内ばかりで自分の釣りができないことに我慢できなくなり、フリーライターに転向。雑誌『アウトドア』『フライロッダース』『フライフィッシャーズ』など多数に寄稿。著書に『巨大鱒に魅入られ、ニュージーランド暮らし』(つり人社)、『極楽ニュージーランドの暮らし方』(山と渓谷社)などがある。
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